サブカルチャー

【青空文庫】吉川英治「かんかん虫は唄う」

目次

かんかん虫とは、星の夜に、秋草の蔭で、しおらしい美音をまろばすあの
かね
たたき虫のことではない。同じく、鉄はたたくが、目も鼻も耳の穴も、まっ黒になって、船のサビ落しをやる労働者の名だ。或いは、港の船を目あてに、ペンキ塗りでも何でもやる自由労働者のことと通用してもよい。

「亀田さんは」
「検事局からすぐに根岸未決監みけつかんへ送られているのさ。それはまあ、これからの工夫として――私が心配しちまッたのは、おまえの方さ」

「亀田さんは」
「検事局からすぐに根岸の未決監みけつかんへ送られているのさ。

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