横浜市

亀の子石

亀の子石の由来

むかしむかし、本牧の海で、その日は魚がとれず、漁師が網で引き上げたのはたった一匹の亀の子でした。漁師は、亀の子を舟底に放り出すと、家に帰ってしまいました。

「見ろよ、亀の子がいるぞ」。浜辺で遊ぶ子供たちは、舟底の亀の子を見つけると、拾い上げ、投げたり蹴飛ばしたりして、ついには死なせてしまいました。

その夜のことです。嵐の季節でもないのに、天候がひどく荒れました。浜辺近くの岬が地響きをたててくずれ、土砂が冷たくなった亀の子の上に降り積もりました。

「死んだ亀の子のたたりだ」。村人たちが亀の子を供養しようと、掘り出してみると、亀の子は石に姿を変えていました。

「かわいそうに」と、一人の老女が石の亀の子をなでました。すると、不思議なことに長年わずらっていたぜんそくがぴたりと治ったのです。

それ以来、せきに苦しむ人々は、三之谷にまつられた、亀の子石をなでに来るようになったということです。

「市民グラフヨコハマ第111号・民話の里」一部改編

あれ?「亀の子石の由来」として看板に書いてある内容と、民話として残っている話が違います。元は民話の通り、咳の神として亀の子を祀っていたのかもしれませんが、「亀の子といえば亀の子たわし」という連想から、たわしで喉をこする、お礼にたわしを返す、などの思いつきが追加されたのかもしれません。亀の子たわしが全国で愛用されたのは昭和前後ですので、話が変わってしまったのもその時期だと思われます。

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